专利摘要:
本発明は、眼へのイオントフォレシスによる送達に適したsiRNAの製剤、siRNAのイオントフォレシス送達のための装置、およびその使用方法を提供する。経強膜イオントフォレシスによって有効量のsiRNAを対象の眼に送達する際に、a)装置を対象の眼球表面の中心に配置し、b)イオントフォレシスを実行することにより、siRNAを対象の眼に投与する。装置の適用面は装置と眼球との間に画定され、該装置は、1つ以上のsiRNA分子またはその製剤で構成された水溶液を含むリザーバーを備えるとともに、発電機に接続されている。なし
公开号:JP2011505917A
申请号:JP2010537119
申请日:2008-12-05
公开日:2011-03-03
发明作者:アイソム・フィル;シューベルト・ウィリアム;パターネ・マイク;モスレミー・ペイマン
申请人:アイゲート ファーマ エスエーエス;
IPC主号:A61N1-30
专利说明:

[0001] 本出願は、2007年12月5日に出願された米国仮特許出願番号61/005,635号の利益を主張するものであり、引用によりその全内容が本明細書に取り込まれる。]
技術分野

[0002] 本発明は、治療的に有意義なオリゴヌクレオチドの短鎖干渉RNA(siRNA)を対象の眼に経強膜イオントフォレシスにより治療的に送達する方法に関する。]
背景技術

[0003] オリゴヌクレオチドは、様々な眼の疾患を処置するために使用されている。全身用製剤、局所用製剤、および注射製剤が、様々な眼の状態に対して使用される。特に、局所適用は、眼の障害に対して非侵襲的に送達されるオリゴヌクレオチドの最も広範囲な用途を占める。しかしながら、このアプローチは、生物学的利用能が低いため、有効性が限られるという問題を有する。]
[0004] 短鎖干渉RNA(siRNA)は、様々な眼の疾患を処置するために使用されている二重鎖RNAオリゴヌクレオチドの一種である。眼粘膜を通過するsiRNAの拡散を可能とする眼用製剤が使用されるが、そのような局所製剤は、取り込みが遅く、不十分で、むらがあるという問題を有する。現在の眼内送達方法は、眼の被曝量が少ないので、頻繁な適用が必要とされ、コンプライアンス(医薬品の服用を規則正しく守ること)の問題が深刻である。]
課題を解決するための手段

[0005] 本発明は、siRNA製剤、薬物送達のためのsiRNA製剤の使用方法、および患者の安全を最大にするための製剤の使用方法に関する。本発明は、眼へのイオントフォレシス(oscular iontophoresis)に適したsiRNA製剤に関する。これらの新規製剤は、様々な眼の障害を処置するために使用することができる。該製剤は、様々なイオントフォレシス量(例えば、様々な電流レベルと適用時間)で使用することができる。このような製剤溶液は、例えば、(1)導入前後のpHを維持するために適切に緩衝化されてもよく、(2)貯蔵寿命(化学的安定性)を長期化するために安定化されてもよく、および/または(3)浸透圧を調節する他の賦形剤を含んでいてもよい。さらに、siRNA溶液は、競合イオンの量を低減にすることが求められる。]
[0006] このようなユニークな投薬形態は、さまざまな治療ニーズに対処できる。眼へのイオントフォレシスは、有効量のsiRNAを眼の組織に送達するための、新規で非侵襲的な外来患者への投与手段である。この非侵襲的な投与手段によって、眼注射で得られる程度またはそれ以上の効果をもたらすことができる。]
[0007] 眼へのイオントフォレシスによって、局所的にsiRNAを適用することは、これまでに報告されていない。様々な治療剤を皮膚へ局所適用するための電気制御されたイオントフォレシスは、すでに商業的ベースで行なわれているが、このような既知の医薬でさえ、イオントフォレシス用にカスタマイズされた製剤を必要とする。そして、このようなカスタマイズにより、投薬の有効性を最大にし、安全性を改善し、商業的な難問に対処する。したがって、皮膚病への適用で既に明らかとなった技術的な問題が、眼内送達においても問題となる。そればかりか、眼へのイオントフォレシスは、さらなる製剤のカスタマイズを必要とする。すなわち、siRNAを眼へイオントフォレシスにより送達するためには、その目的に適合した新規な製剤を開発することが必要である。非侵襲性で局所的に眼へ送達することが可能であるsiRNAを開発することは、眼科医にとっての処置の選択肢を大幅に広げるであろう。]
[0008] 1つの実施形態は、治療的に有意義なオリゴヌクレオチドの短鎖干渉RNA(siRNA)を対象の眼に経強膜イオントフォレシスにより治療的に送達する方法に関し、該方法は、以下の工程:
a.眼へのイオントフォレシス装置を準備する工程であって、前記装置はオリゴヌクレオチドの水性組成物を含んでいる工程;
b.この装置を対象の眼球表面の中心に配置する工程であって、前記装置は直流発電機に接続されており、この装置の適用面は、眼球の光軸に向かって凹状の外線によって少なくとも部分的に画定されており、前記装置の外壁は、光軸に対して外側の前記外線に延在している工程;および
c.オリゴヌクレオチドを対象の眼に、イオントフォレシスを実行することにより投与する工程
を含み、それによりオリゴヌクレオチドを眼に送達する。]
[0009] 1つの実施形態は、経強膜イオントフォレシスによって有効量のsiRNAを対象の眼に送達する方法に関し、該方法は、
a)装置を対象の眼球表面の中心に配置する工程であって、装置の適用面は装置と眼球との間に画定され、該装置は、1つ以上のsiRNA分子またはその製剤で構成された水溶液を含むリザーバーを備えるとともに、発電機に接続されている工程;および
b)イオントフォレシスを実行することにより、siRNAを対象の眼に投与する工程
を含み、それによりsiRNAを眼に送達する。特定の実施形態では、装置を眼球表面へ適用する際には、適用面は、眼球の光軸に向かって凹入する外線によって少なくとも部分的に画定されており、前記装置の外壁は、光軸に対して外側の前記外線に延在している。]
[0010] 特定の実施形態では、siRNAは、約15〜約30ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、siRNAは、約21〜約23ヌクレオチド長である。特定の実施形態では、装置のリザーバーに治療組成物が含まれており、この治療組成物は、眼へのイオントフォレシスに適した水溶液中に、処方された少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む。特定の実施形態では、治療組成物は、緩衝剤、浸透圧剤、浸透増強剤、キレート剤、抗酸化剤、および抗菌性保存剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を含む。特定の実施形態では、治療組成物は、イオントフォレシス適用のために調整される前に、凍結乾燥される。
特定の実施形態では、リザーバーは、ナノ粒子形態のsiRNA製剤を含む。特定の実施形態では、ナノ粒子は、緩衝剤、浸透圧剤、浸透増強剤、キレート剤、抗酸化剤、および抗菌性保存剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤を含む。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約20nm〜約400nmの直径を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約40nm〜約200nmの流体力学的直径を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約+5mV〜約+100mVのゼータ電位を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約+20mV〜約+80mVのゼータ電位を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約−5mV〜約−100mVのゼータ電位を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約−20mV〜約−80mVのゼータ電位を有する。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約+0.25mA〜約+10mAのイオントフォレシス電流により送達される。特定の実施形態では、ナノ粒子は、約+0.5mA〜約+5mAのイオントフォレシス電流により送達される。
特定の実施形態では、リザーバーは、約50μL〜約500μLのsiRNA製剤を保持する。特定の実施形態では、リザーバーは、約150μL〜約400μLのsiRNA製剤を保持する。特定の実施形態では、投与時間は、約1分間〜約20分間である。特定の実施形態では、投与時間は、約2分間〜約10分間である。特定の実施形態では、投与時間は、約3分間〜約5分間である。特定の実施形態では、溶液形態のsiRNAは、約−0.25mA〜約−10mAのイオントフォレシス電流により送達される。特定の実施形態では、溶液形態のsiRNAは、約−0.5mA〜約−5mAのイオントフォレシス電流により送達される。特定の実施形態では、siRNAの投与は、単回投与で行われる。特定の実施形態では、siRNAの投与は、多回投与で行われる。
特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、イオントフォレシスの前に注射により送達される。特定の実施形態では、注射方法は、眼房内注射、角膜内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、網膜下注射、硝子体内注射、および前房内注射からなる群から選択される。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、イオントフォレシスの前に局所的に投与される。特定の実施形態では、眼へのイオントフォレシスの工程は、オリゴヌクレオチドを投与する工程前に、工程中に、または工程後に実施される。]
[0011] 1つの実施形態は、哺乳動物の眼の疾患を処置する方法に関し、該方法は、有効量のsiRNAを眼へのイオントフォレシスにより投与することを含む。]
[0012] 1つの実施形態は、対象の眼へのイオントフォレシス送達に適したsiRNA製剤に関し、該製剤は、siRNAを含むナノ粒子組成物を含む。]
[0013] 1つの実施形態は、対象の眼にsiRNAを送達するための装置に関し、該装置は、
a)眼球の一部を覆うように意図された表面に沿って延在している、siRNA製剤を含む少なくとも1つの媒体を含むリザーバー;および
b)リザーバーと接続された電極
を含み、ここで、リザーバーが眼球に接触して配置されるとき、電極は、媒体を通って眼の表面に向けられる電界を供給することができ、それによってsiRNAを眼内に移行させて、その結果、イオントフォレシスにより眼の表面を通してsiRNA製剤を送達する、装置に関する。特定の実施形態では、リザーバーは、
a)siRNA製剤を含む少なくとも1つの媒体を受容するための第1容器;
b)導電素子を含む導電媒体を受容するための第2容器;および
c)第1容器と第2容器との間に位置する半透膜であって、該半透膜は、導電素子に対して透過性であり、活性物質に対して非透過性である半透膜;
を含む。]
図面の簡単な説明

[0014] オリゴヌクレオチド、例えば、siRNA分子を所望の眼の組織に送達するための眼用イオントフォレシスシステムの概略図である。
1mg/mlの濃度で1本鎖オリゴヌクレオチド(ss−オリゴ)でイオントフォレシス処置されたウサギの眼の結膜および強膜の蛍光顕微鏡画像(図2A)である。動物は、15mA・分のイオントフォレシス電流(図2A)で処置された。スケールバーは、25ミクロン(μm)を表し、パネルAおよびBの両方に適用される。
1mg/mlの濃度で1本鎖オリゴヌクレオチド(ss−オリゴ)で受動拡散されたウサギの眼の結膜および強膜の蛍光顕微鏡画像(図2B)である。図2Aと同じ継続時間の受動拡散の効果を示す。動物は、無電流(図2B)で処置された。スケールバーは、25ミクロン(μm)を表し、パネルAおよびBの両方に適用される。
図2で見られる画像から生成した強度プロファイルである。図3Aは、イオントフォレシス処置後のss−オリゴの強度プロファイルを示す。これらの画像は、より高い強度およびより広い分布の両方を示し、このことは、受動拡散と比較して、より多くのss−オリゴがイオントフォレシス処置後に組織内に浸透したことを示す。
図2で見られる画像から生成した強度プロファイルである。図3Bは、5分間の受動拡散後のss−オリゴの分布を表す。これらの画像は、より高い強度およびより広い分布の両方を示し、このことは、受動拡散と比較して、より多くのss−オリゴがイオントフォレシス処置後に組織内に浸透したことを示す。
イオントフォレシス送達(図4A)後のss−オリゴの分布の蛍光顕微鏡画像である。これらの画像は、受動拡散と比較して、ss−オリゴがイオントフォレシス処置後により広い面積に送達されたことを示す。
受動拡散(図4Bおよび4C)後のss−オリゴの分布の蛍光顕微鏡画像である。これらの画像は、受動拡散と比較して、ss−オリゴがイオントフォレシス処置後により広い面積に送達されたことを示す。
受動拡散(図4Bおよび4C)後のss−オリゴの分布の蛍光顕微鏡画像である。これらの画像は、受動拡散と比較して、ss−オリゴがイオントフォレシス処置後により広い面積に送達されたことを示す。
イオントフォレシス処置後のウサギの網膜の蛍光顕微鏡画像である。図5Aは、網膜の全層におけるss−オリゴの分布を示す。なお、図5Bは、網膜のこの領域で観察された自家蛍光を示し、これより図5Aで記録されたシグナルがss−オリゴの存在によるものであることを示す。赤=Cy5標識ss−オリゴ、青=核、緑=網膜組織内で見られた自家蛍光シグナル。
イオントフォレシス処置後のウサギの網膜の蛍光顕微鏡画像である。図5Bは、網膜のこの領域で観察された自家蛍光を示す。赤=Cy5標識ss−オリゴ、青=核、緑=網膜組織内で見られた自家蛍光シグナル。
−4mAの電流で処置された動物(レーン:5〜8)の眼房水中で検出されたss−オリゴを示すが、他方、受動的に処置されたウサギ(レーン:1〜4)の眼房水では、ss−オリゴは検出することができなかったことを示す。レーン9は、水中にスパイクされた既知量のss−オリゴが実験サンプルと同じ大きさで検出されることを示し、これはss−オリゴのイオントフォレシス送達が、分子の完全性に影響を与えないという主張を裏付ける。濃度:1mg/ml;継続時間5分間;電流は0mAまたは−3.0mAであった;対照レーンは1ng/mlの1本鎖オリゴである。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)で無電流で処置されたウサギの眼の結膜(図7A)の蛍光顕微鏡画像(図7A)である。動物は、無電流で5分間、または20mA・分のイオントフォレシス電流(−4mA、5分間)で処置された。スケールバーは、25ミクロン(μm)を表し、図7Aおよび7Bに適用される。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)でイオントフォレシス処置されたウサギの眼の結膜(図7B)の蛍光顕微鏡画像(7B)ある。動物は、無電流で5分間、または20mA・分のイオントフォレシス電流(−4mA、5分間)で処置された。スケールバーは、25ミクロン(μm)を表し、図7Aおよび7Bに適用される。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)で無電流で処置されたウサギの眼の強膜(図7C)の強度プロファイル(図7C)である。動物は、無電流で5分間、または20mA・分のイオントフォレシス電流(−4mA、5分間)で処置された。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)でイオントフォレシス処置されたウサギの眼の強膜(図7D)の強度プロファイル(図7D)である。動物は、無電流で5分間、または20mA・分のイオントフォレシス電流(−4mA、5分間)で処置された。
受動拡散(図8A)後のウサギの眼の角膜縁領域の蛍光顕微鏡画像であり、これは、イオントフォレシス処置後のsiRNA送達面積の増大を示している。スケールバーは、250ミクロン(μm)を表し、パネルAおよびBの両方に適用される。
イオントフォレシス処置(図8B)後のウサギの眼の角膜縁領域の蛍光顕微鏡画像であり、これは、イオントフォレシス処置後のsiRNA送達面積の増大を示している。スケールバーは、250ミクロン(μm)を表し、パネルAおよびBの両方に適用される。
図8Cは、受動拡散およびイオントフォレシス処置後のsiRNAの分布における違いを比較するグラフである。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)でイオントフォレシス処置されたウサギの眼の結膜(図9A)および固有層(図9A)の蛍光顕微鏡画像である。これらの画像は、イオントフォレシス処置後の広範囲な細胞取り込みを示す。スケールバーは、10ミクロン(μm)を表し、図9Aおよび図9Bの両方に適用される。赤=Cy5標識VEGFのsiRNA、青=核。
Cy5標識2本鎖VEGFのsiRNA(1mg/ml)でイオントフォレシス処置されたウサギの眼の固有層(図9B)の蛍光顕微鏡画像である。これらの画像は、イオントフォレシス処置後の広範囲な細胞取り込みを示す。スケールバーは、10ミクロン(μm)を表し、図9Aおよび図9Bの両方に適用される。赤=Cy5標識VEGFのsiRNA、青=核。
−4mAの電流で処置された動物(レーン:1〜4)の眼房水中で検出されたsiRNAを示すが、他方、受動的に処置されたウサギ(レーン:5〜8)の眼房水中では、siRNAは検出することができなかった。レーン11は、眼房水中にスパイクされた既知量のsiRNAが実験サンプルと同じ大きさで検出されることを示し、これはsiRNAのイオントフォレシス送達が、分子の完全性に影響を与えないという主張を裏付ける。濃度:1mg/ml;継続時間10分間;電流は−4.0mAまたは0mAのいずれかであった;対照レーン9、10および11は、それぞれ0.5、1および1.5ng/mlで眼房水中にスパイクされたsiRNAである。] 図2A 図2B 図3A 図3B 図4A 図4B 図5A 図5B 図7A 図7B
[0015] 本明細書では、siRNAを対象の眼に送達するための組成物および方法が記載される。siRNAの送達は、例えば、様々な疾患[例えば、緑内障、糖尿病性網膜症、増殖性硝子網膜症、加齢黄斑変性(AMD)、萎縮型AMD、滲出型AMD、ドライアイなど]を処置するために有用である。本明細書に記載される実施形態は、有効量のsiRNAが、眼へのイオントフォレシスによって送達され得るという予想外の発見に関する。送達は、例えば、1つ以上の特定の遺伝子の下方制御を可能とし、これにより、例えば、特定の疾患または障害の処置(または治療)を行なうことができる。]
[0016] 本明細書で使用される場合、「短鎖干渉RNA」という用語は、約18〜25ヌクレオチド長の2本鎖RNA分子の一種を意味する。標準的なsiRNA分子の平均的な長さは、21または23nt(塩基)である。siRNAは、生物学において色々な役割を果たす。本発明では、siRNAのRNA干渉(RNAi)を利用して、様々な眼の状態を処置するために、遺伝子の発現を特異的に低下させる。RNAiの機序は、2本鎖RNA分子に関わるが、本発明では、1本鎖または部分的2本鎖RNA分子を、所望の組織へ送達することができる。そして、1本鎖または部分的2本鎖RNA分子は、標的遺伝子の発現を下方制御する所望の2本鎖RNA分子に変換される。なお、本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、動物、特に哺乳動物、例えば、ヒトを意味する。]
[0017] 眼へのイオントフォレシスは、眼の前方区画および後方区画の双方へ薬剤を送達することが可能であり、従来の方法についての実際的な制約を克服することができる眼科治療における技術である(Eljarrat-Binstock, E. and Domb, A., J. Control Release, 110:479-489, 2006)。イオントフォレシスは、非侵襲性の技術であり、この方法では、弱い電流が印加されることにより、イオン化薬剤または荷電した薬剤担体が体組織へ浸透する量を増強する。正に荷電した物質は、アノードにおける電荷反発によって組織に運搬され得るが、他方、負に荷電した物質は、反発によってカソードから離れる。適用の簡易さ、副作用の減少、および標的領域への薬剤送達の増強は、主に経皮分野でのイオントフォレシスの広範囲な臨床的使用をもたらした。一方、眼へのイオントフォレシスは、抗生物質(Barza, M. et al., Ophthalmology, 93:133-139, 1986; Rootman, et al., Arch. Ophthalmol., 106:262-265, 1988; Yoshizumi, M. et al., J. Ocul. Pharmacol., 7:163-167, 1991; Frucht-Pery, J. et al., J. Ocul. Pharmacol. Ther., 15:251-256, 1999; Vollmer, D. et al., J. Ocul. Pharmacol. Ther., 18:549-558, 2002; Eljarrat-Binstock, E. et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 45:2543-2548, 2004; Frucht-Pery, J. et al., Exp. Eye Res., 78:745-749, 2004)、抗ウイルス剤(Lam, T. et al., J. Ocul. Pharmacol, 10:571-575, 1994)、コルチコステロイド(Behar-Cohen, F. et al., Exp. Eye Res., 65:533-545, 1997; Behar-Cohen, F. et al., Exp. Eye Res., 74:51-59, 2002; Eljarrat-Binstock, E. et al., J. Control Release, 106:386-390, 2005)、化学療法剤(Kondo, M. and Araie, M., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 30:583-585, 1989; Hayden, B. et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 45:3644-3649, 2004; Eljarrat-Binstock, E. et al., Curr. Eye Res., 32:639-646, 2007; Eljarrat-Binstock, E. et al., Curr. Eye Res., 33:269-275, 2008)、およびオリゴヌクレオチド(Asahara, T. et al., Jpn. J. Ophthalmol., 45:31-39, 2001; Voigt, M. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 295:336-341, 2002)を含むいろいろな有効成分を送達するために広範囲に研究されてきた。イオントフォレシスのプロセスは、イオン化し得る物質(例えば、薬剤または製剤)に電流を印加し、対象の表面を通過する製剤の移動度を増大させることを伴う。3つの原理的な力により、電流によって引き起こされる流動(物質の移動)が支配され、最も主要な力は電気化学的反発であり、この力によって同符号の荷電種が表面(組織)を通過して侵入する。]
[0018] 電流が、電解質や帯電物質(例えば、活性医薬成分(Active pharmaceutical ingredient:API)、またはAPIを含む製剤)を含む水溶液を通過するとき、以下の事象:
(1)電極によりイオンが発生する事象、
(2)新しく発生したイオンが、同符号荷電粒子(一般に、送達されている薬剤)に接近/衝突する事象、および
(3)新たに発生したイオン間の電荷反発によって、溶解/浮遊した荷電粒子(API)が電極に隣接している表面(組織)へ押し込まれ、および/または該表面(組織)を通過する事象が起こる。電流を継続的に印加すると、単なる局所的な投与で達成されるよりも格段に深く、組織内へAPIを侵出させることができる。イオントフォレシスの程度は、印加電流および処置時間に比例する。]
[0019] イオントフォレシスは、水系製剤を利用してもよく、水系製剤では、電極により容易にイオンが発生し得る。イオンを生成するために、以下の2つの種類の電極:(1)不活性電極および(2)活性電極を使用することができる。それぞれの種類の電極は、電解質を含む水性媒体を必要とする。不活性電極でのイオントフォレシスは、印加電流によってもたらされ得る加水分解の程度によって支配される。電気分解反応は、水酸化物(陰極)イオンまたはヒドロニウム(陽極)イオンのいずれかを生成する。製剤は、緩衝剤を含んでいてもよく、緩衝剤は、こうしたイオンにより引き起こされるpH変動を緩和することができる。ある種の緩衝剤は、同符号に帯電した複数のイオンをもたらすことができ、これらのイオンは、電気分解的に発生して医薬品の送達を減少させ得るイオンをめぐって、医薬品[すなわちイオントフォレシスされる積み荷(cargo)であって、例えば、siRNAなど]と競合してもよい。薬剤送達電極の極性は、医薬品の化学的性質、特にそのpKa(複数を含む)/等電点および初期投薬溶液のpHに依存する。このような極性は、電気分解により発生したイオンと、医薬品を組織内に侵入させる医薬品の電荷(または活性成分を含む組成物、例えば、ナノ粒子製剤の電荷)との間の電気化学的反発に主としてよるものである。従って、イオントフォレシスは、局所的な薬剤適用と比較して、薬剤送達を増大させるという重要な利点を提供する。薬剤送達速度は、当業者により決定され、印加電流を変えることにより調節できる。]
[0020] イオントフォレシス送達に有用な装置としては、例えば、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび関連技術が挙げられる。EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび技術を使用することにより、他の装置と比較した場合、薬物の使用量を減少でき、1回の処置当たりの経費を削減できる。本明細書で記載される組成物および方法では、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび関連技術の能力を利用して、治療的に有意義なオリゴヌクレオチドを無傷のままで眼の組織中へ送達することもできるし、さらに眼の組織を通過させて送達することもできる。そして、送達されたオリゴヌクレオチドが送達後に機能するのを可能にする。]
[0021] 本明細書で記載される組成物および方法では、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび技術によるイオントフォレシス処置することにより、細胞へ取り込まれるオリゴヌクレオチドの量を増強することを可能とする。オリゴヌクレオチドを眼の組織に送達するためにEyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび技術を使用すると、送達の局所的方法と比べて、この分子の細胞透過性を増大させる。さらに、特定の組成物(例えば、特異的に設計されたナノ粒子など)を用いることにより、より効率的に送達することが可能となる。また、例えば、所望の電荷/質量比を生み出すことによってより効果的な送達が可能となり、また、例えば、ナノ粒子の表面に取り込み因子を組み込むことによって、細胞による取り込みが可能となる。]
[0022] 遺伝子発現の標的化阻害のための2本鎖RNA(例えば、siRNA)を使用する方法は、当業者に既知である。当業者であれば、下方制御されるべき内因性遺伝子(例えば、異常に発現されて疾患の状態を引き起こす遺伝子)に対して相同なsiRNA分子を設計することは理解できるであろう。配列は、既知の塩基対規則に従って選択される。本明細書で記載される方法および組成物は、siRNA分子を特定の眼の組織(複数を含む)に送達するために有用である。なぜなら、このような送達および取り込みは、本発明の方法または装置などを利用しなければ有効でないことが証明されているからである。従来行なわれていたsiRNA分子の送達および取り込みに関する方法とは異なり、本発明では、特定の組織への送達および取り込みされた後のsiRNA分子の有効性は損なわれない。本明細書に記載される方法は、特定の所望の組織へのsiRNA分子の送達および取り込みを増強させる。そして、特定の分子のsiRNA機能によって、所望の遺伝子産物の下方制御が可能となり、それにより遺伝子産物に関連した疾患を効果的に処置することができる。ここで、特定siRNAの有効量とは、特定の遺伝子の臨床的に有意義な下方制御を生じるのに十分な量であり、当業者によって決定される。本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果(例えば、希望の効果が得られる程度の特定の遺伝子標的の下方制御)を達成するのに必要なsiRNAの用量を意味する。「有効量」という用語は、また、眼疾患に関連した1つ以上の徴候または臨床的事象の緩和または減少を指す量を意味する。]
[0023] 本明細書で記載される組成物および方法に関し、siRNAは、約15〜約30ヌクレオチド長、例えば、約22〜約23ヌクレオチド長である。siRNA分子は、完全に2本鎖であってもよいし、部分的に2本鎖であってもよいし、または1本鎖であってもよい。したがって、当業者は、2本鎖RNA分子として出発する分子を生成することもできるし、あるいは所望の組織または細胞への取り込み後にインビボで2本鎖RNA分子に変換される分子を生成することもできる。本明細書に記載される方法は、RNAまたはRNAを一般に含む製剤の物理的特性(例えば、電荷/質量比)に依拠するので、前記方法および組成物は、少なくとも送達および取り込みに関して、配列には非依存的であることを当業者は理解できるだろう(Brand, R. et al., J. Pharm. Sci. 49-52, 1998)。]
[0024] 所望の眼の組織への送達および取り込みの後で、siRNA分子は、所望の標的遺伝子の内因性遺伝子発現を効果的に下方制御する。標的遺伝子の特定の例としては、例えば、βアドレナリン受容体1および/または2;炭酸脱水酵素II;コクリン;骨形態形成タンパク質受容体1/2;グレムリン;アンジオテンシン変換酵素;1型アンジオテンシンII受容体(AT1);アンジオテンシノーゲン(ANG);レニン;捕体D;捕体C3;捕体C5;捕体C5a;捕体C5b;捕体因子H;VEGF;VEGF受容体(1、2または両方);インテグリンαVβ3;PDGF受容体β;プロテインキナーゼC;c−JUN転写因子;IL−1α;IL−1β;TNFα;MMP;ICAM−1;インスリン様成長因子−1;インスリン様成長因子−1受容体;成長ホルモン受容体GHr;インテグリンαVβ5;TNFα;ICAM−1;MMP−10;MMP−2;MMP−9などが挙げられるが、これらに限定されない。]
[0025] 本発明で用いられるsiRNAは、ナノ粒子の形態でカプセル化できる。ある実施形態では、APIがナノ粒子中にカプセル化される場合、ナノ粒子の特徴に依存して、特定の均一な電荷/質量比を達成することができる。APIをナノ粒子中にカプセル化すると、例えば、APIの増大した滞留時間、特定細胞への取り込みの増加、所望の組織または細胞内でのAPIの特定標的に対する分子標的化、APIの増大した安定性、および特定ナノ粒子に関連した他の有利な特質が達成される。]
[0026] siRNA製剤または組成物は、例えば、溶液中[例えば、製剤の完全性(integrity)を保存するのに有用な溶液中、および/または適切なイオントフォレシス緩衝剤として有用な溶液中]に含まれてもよい。このような溶液は、眼の組織ヘのオリゴヌクレオチドをイオントフォレシスを利用して送達するために最適化されてもよい。この場合、例えば、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび関連技術を利用して、イオントフォレシスによる送達する前およびイオントフォレシス中でのオリゴヌクレオチドの安定性を確保しながら、このような溶液はイオントフォレシスを利用して眼の組織ヘオリゴヌクレオチドを送達する。前記製剤および/または溶液は、これらが適用される眼の組織との適合性を有するように設計することもできる。]
[0027] オリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド負荷ナノ粒子を送達するためにEyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび関連技術を使用する場合、溶液が一定の緩衝作用を達成できるようにアプリケーターを改変したり、および/またはイオントフォレシス処置を完了するのに必要な溶液の容積を低減することによって、アプリケーターおよび関連技術の機能をさらに増強することができる。上記した2つは、アプリケーターに緩衝系を添加することにより達成される。アプリケーターで緩衝系を使用すると、イオントフォレシス処置の間、患者の安全性を保証し、オリゴヌクレオチドの完全性を維持する。]
[0028] また、膜型緩衝系(membrane-shaped buffering system)をEyeGate(登録商標)IIアプリケーターへ組み込むと、薬剤含有溶液のためのリザーバーとして有用なフォーム保持体(または発泡体)の容積を減少させることができる。フォーム保持体は、6mm(長さ)×14mm(内径)×17mm(外径)の概略寸法を有する中空円筒の形状で、急激に膨潤する親水性のポリウレタン系フォームマトリックスから作られている。膜型緩衝系の利用により、フォーム保持体を含浸するのに必要な溶液(薬物を含む)の全体の容積を減少させることができる。例えば、3mmの厚さのハイドロゲル/膜緩衝系を組み込むと、標準EyeGate(登録商標)IIアプリケーターで必要とされる量と比較して、薬剤含有溶液を全体的に50%減少させることができる。例えば、1mm毎にフォーム保持体をアプリケーターから除くと、リザーバーを満たすのに必要な薬剤含有溶液が約16%減少する。このように、薬剤含有溶液の量は、個々の処置計画に必要な特定の量を満たすように適合させることができる。]
[0029] EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび技術は、治療的に有意義なオリゴヌクレオチドのナノ粒子製剤を眼の組織中に、および眼の組織を通過させて送達するために使用することができる。次いで、このナノ粒子は、オリゴヌクレオチドを完全な状態で送達するために、それらの積み荷(例えば、活性成分、siRNAオリゴヌクレオチド)を時間制御および/または速度制御された様式で放出することができ、それにより、それらが細胞に取り込まれその後に機能することを可能とする。オリゴヌクレオチドの大きさ、ヌクレオチドの組成、および/またはオリゴヌクレオチドに対する改変に関わらず、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターおよび技術は、オリゴヌクレオチドの完全性には影響を与えない。]
[0030] siRNA分子をイオントフォレシスによって所望の眼の組織に送達するために、予め製造されたオリゴヌクレオチド負荷ナノ粒子を使用することができる。眼の薬剤送達について、以下のナノ粒子についての考察が利用できる(Zimmer, A. and Kreuter. J., Adv. Drug Delivery Reviews, 16: 61-73, 1995; Amrite and Kompella, Nanoparticles for Ocular Drug Delivery, In: Nanoparticle Technology for Drug Delivery, Vol. 159, Gupta and Kompella (eds.), 2006; Kothuri et al., Microparticles and Nanoparticles in Ocular Drug Delivery, In: Ophthalmic Drug Delivery Systems, Vol. 130, Ashim K. Mitra (eds.), 2nd edition, 2008)。]
[0031] 眼への送達のためのナノ粒子を製造する際に使用される材料としては、例えば、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(ヘキシルシアノアクリレート)、ポリ(ヘキサデシルシアノアクリレート)、またはアルキルシアノアクリレートとエチレングリコールとのコポリマーなどのポリアルキルシアノアクリレート類;ポリ(DL−ラクチド)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(ε−カプロラクトン)、およびポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群;またはEudragit(登録商標)RL 100、Eudragit(登録商標)RS 100、Eudragit(登録商標)E 100、Eudragit(登録商標)L 100、Eudragit(登録商標)L 100−55、およびEudragit(登録商標)S 100などのEudragit(登録商標)ポリマーからなる群が挙げられるが、特に限定されるものではない。ナノ粒子は、また、例えば、ポリビニルアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、またはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートからも製造することができる。さらに、材料としては、例えば、天然の多糖類(例えば、キトサン、アルギン酸塩、またはその組み合わせなど);アルギン酸塩とポリ(l−リジン)との複合体;ペグ化キトサン;アルブミンなどの天然タンパク質;リポソームなどの脂質およびリン脂質;またはシリコンなども挙げられ得る。他の材料としては、例えば、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ポリ(l−リジン)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)が挙げられる。]
[0032] (実施例1)
図1は、眼へのイオントフォレシス装置EyeGate(登録商標)IIアプリケーターの縦断面図を示す。この装置は、オリゴヌクレオチド水溶液で含浸したフォーム保持体、および緩衝組成物を含むハイドロゲルマトリックス膜からなる。図面中の装置要素の形状、大きさ、および相対的な位置は、必ずしも正確ではないか、または一定の縮尺率で描かれていない。描かれている要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関していかなる情報をも伝えることを意図するものではなく、図面での理解を容易にするためにだけ選択されたものである。医薬製剤のリザーバーは、(i)1つ以上の治療用オリゴヌクレオチド化合物、場合により、緩衝組成物、および場合により、眼内送達について医薬的に許容される不活性成分を含む液状製剤で浸透されたフォーム支持体;および、場合により、(ii)緩衝組成物を含むハイドロゲル膜を備える。少なくとも1つの治療化合物がその溶液に溶解している。緩衝組成物は、(i)カチオンおよび/またはアニオン交換樹脂を含む複数のイオン交換樹脂粒子;(ii)カチオン性またはアニオン性粒子を含む複数のポリマー粒子;(iii)カチオン性またはアニオン性ポリマー;(iv)生物学的緩衝剤;または(v)無機緩衝剤である。粒子は、規則的形状(例えば、円形、球形、立方体、円筒形、繊維状、および針状)または不規則形状を有することができる。アプリケーター(10)は、以下の主な要素:
11.装置のための固定支持体となり、医薬製剤をリザーバーに移す手段となる近位部;
12.電流発生器と電極との間に接続ポイントを提供するソース接続ピン;
13.電流を製剤リザーバーに転送する電極;
14.送達すべき医薬製剤を含むリザーバー;
15.眼と接触する軟質プラスチック製の遠位部;および
16.フォーム保持体を含浸可能な溶液に溶解した治療用オリゴヌクレオチド化合物
を備える。] 図1
[0033] (実施例2 抗VEGF siRNAのインビボでの送達)
体重約3kgの雌性ニュージーランドホワイトウサギを、輸送のストレスから回復させ、施設の環境条件に順応させるために、処置前に少なくとも3日間飼育する。処置の少なくとも24時間前に、両方の耳の後ろの毛を脱毛クリームを用いて除去する。動物たちに対して、処置の20分前にケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射により麻酔をかける。動物に麻酔をかけた後、戻り電極を両耳の裸の皮膚(1つの耳当たり1片)に配置し、発電機に接続する。27ゲージ針を有する1mLの注射器を用いて、約0.25mL〜約0.50mLのsiRNA含有液を、必要なだけ複数セットのEyeGate(登録商標)IIアプリケーター中のフォーム保持体に加える。フォーム部(気泡部)が完全に水和したことを確かめるために、各アプリケーターを、目視で調べる。気泡または未水和部分があれば、機械的に取り除く。次いで、EyeGate(登録商標)IIアプリケーターを発電機に接続し、局所麻酔薬を1滴投与した右眼の上に配置する。適切な処置を施し、装置を眼から取り除く。次に、動物の向きを変え、このプロセスを左眼についても繰り返す。残りのウサギは、新しいアプリケーターを用いて同様の様式で、siRNAのイオントフォレシス量の投与をそれぞれ受ける。]
[0034] ウサギに対しては、右眼から始めてそれぞれの眼に4mAの電流処置を10分間(40mA・分の総イオントフォレシス量)行なうことができる。各動物に対する左眼の処置が終了した直後に、1mLの血液を採取し、スピンダウンして血漿サンプルを回収する。血液サンプルを採取後、動物を麻酔する。動物はすべて、辺縁耳静脈に4mLの過剰用量のユサゾール(Euthasol)を静脈内に注射して安楽死させる。死亡は心拍が無いことと無呼吸により確認される。死亡が確認されると、各眼からの眼房水を0.33mLのインスリン注射器で採取し、DNAseおよびRNAseを含まないチューブに入れ、分析するまで−80℃で保存する。次いで、眼を摘出してそれぞれの構成成分に解剖して、各組織型を、DNAseおよびRNAseを含まない別々のチューブに入れて、定量および完全性の測定のための質量分析による分析まで、−80℃で保存する。]
[0035] (実施例3 7.5kDaの1本鎖オリゴヌクレオチドの経強膜送達)
1本鎖RNA分子のイオントフォレシス移動度を、インビボで眼の組織において調べた。]
[0036] ニュージランドホワイトウサギ(約3kg)は、EyeGate(登録商標)II装置を3mAの電流で5分間(15mA・分の総イオントフォレシス量)用いて、1mg/mL濃度で1本鎖RNAオリゴヌクレオチドの単回投与を受けた。]
[0037] EyeGate(登録商標)II装置を用いてウサギの眼へ1本鎖オリゴヌクレオチドをイオントフォレシスで送達した場合、受動拡散と比較して、眼の組織に移送されたオリゴヌクレオチドの量は増加した(図2、3および5)。イオントフォレシス処置は、また、受動拡散と比較して、オリゴヌクレオチドが送達される面積を増大させた(図4)。また、オリゴヌクレオチドの完全性は、イオントフォレシス処置した後であっても、影響を受けず保たれていた(図6)。] 図6
[0038] (実施例4 15kDaの2本鎖siRNAの経強膜送達)
加齢黄斑変性の処置に有効な15kDaの2本鎖血管内皮細胞増殖因子(VEGF)siRNA分子を試験した。抗VEGF siRNA分子(蛍光顕微鏡による検出のためにCy5で標識)を、EyeGate(登録商標)II装置を用いるイオントフォレシスによりニュージランドウサギの眼に送達した(図7〜10)。1本鎖オリゴヌクレオチドで見られたように、EyeGate(登録商標)II装置を用いてイオントフォレシスを行うと、受動拡散と比較して、眼のいろいろな組織に送達されるオリゴヌクレオチドの量を増加させ(図7)、同様にsiRNAが送達される総面積を増大させた(図8)。また、EyeGate(登録商標)II装置を用いたイオントフォレシス処置では、受動拡散と比較して、観測された抗VEGF siRNAの細胞取り込み量を増加させた(図9)。また、さらに、siRNAオリゴヌクレオチドの完全性は、イオントフォレシス処置後、変化しなかった(図10)。] 図10
[0039] さらなる疾患および遺伝子標的を、表1に要約し、列挙する。]
[0040] ]
[0041] ]
[0042] ]
[0043] ]
[0044] ]
実施例

[0045] (均等物)
本発明の特定の実施形態に関して本発明を説明したが、さらなる変更も可能であることが理解される。さらにまた、本出願は、本発明が関連する分野における既知または慣習的な実施の範囲に含まれるような、および添付の請求の範囲に包含されるような本発明の開示からの逸脱を含めて、本発明のいかなる変更、使用または改変をも包含することを意図するものである。上記で引用された全ての参考文献は、引用することによりその全体が本明細書に取り込まれる。]
权利要求:

請求項1
経強膜イオントフォレシスによって有効量のsiRNAを対象の眼に送達する方法であって、a)装置を対象の眼球表面の中心に配置する工程であって、装置の適用面は装置と眼球との間に画定され、該装置は、1つ以上のsiRNA分子またはその製剤で構成された水溶液を含むリザーバーを備えるとともに、発電機に接続されている工程;およびb)イオントフォレシスを実行することにより、siRNAを対象の眼に投与する工程を含み、それによりsiRNAを眼に送達する、方法。
請求項2
請求項1において、装置を眼球表面へ適用する際に、前記適用面が眼球の光軸に向かって凹入する外線によって少なくとも部分的に画定されており、前記装置の外壁は、光軸に対して外側の前記外線に延在している、方法。
請求項3
請求項1において、前記siRNAが、約15〜約30ヌクレオチド長である、方法。
請求項4
請求項1において、前記siRNAが、約21〜約23ヌクレオチド長である、方法。
請求項5
請求項1において、前記リザーバーが、眼へのイオントフォレシスに適した水溶液中に、処方された少なくとも1つのオリゴヌクレオチド化合物を含む治療組成物を含む、方法。
請求項6
請求項5において、前記治療組成物が、緩衝剤、浸透圧剤、浸透増強剤、キレート剤、抗酸化剤、および抗菌性保存剤から選択される少なくとも一種の添加剤を含む、方法。
請求項7
請求項5において、前記治療組成物が、イオントフォレシス適用のために調整される前に凍結乾燥される、方法。
請求項8
請求項1において、前記リザーバーが、ナノ粒子形態のsiRNA製剤を含む、方法。
請求項9
請求項8において、前記ナノ粒子が、緩衝剤、浸透圧剤、浸透増強剤、キレート剤、抗酸化剤、および抗菌性保存剤から選択される少なくとも一種の添加剤を含む、方法。
請求項10
請求項8において、前記ナノ粒子が、約20nm〜約400nmの直径を有する、方法。
請求項11
請求項8において、前記ナノ粒子が、約40nm〜約200nmの流体力学的直径を有する、方法。
請求項12
請求項8において、前記ナノ粒子が、約+5mV〜約+100mVのゼータ電位を有する、方法。
請求項13
請求項8において、前記ナノ粒子が、約+20mV〜約+80mVのゼータ電位を有する、方法。
請求項14
請求項8において、前記ナノ粒子が、約−5mV〜約−100mVのゼータ電位を有する、方法。
請求項15
請求項8において、前記ナノ粒子が、約−20mV〜約−80mVのゼータ電位を有する、方法。
請求項16
請求項8において、前記ナノ粒子が、約+0.25mA〜約+10mAのイオントフォレシス電流により送達される、方法。
請求項17
請求項8において、前記ナノ粒子が、約+0.5mA〜約+5mAのイオントフォレシス電流により送達される、方法。
請求項18
請求項1において、前記リザーバーが、約50μL〜約500μLのsiRNA製剤を保持する、方法。
請求項19
請求項1において、前記リザーバーが、約150μL〜約400μLのsiRNA製剤を保持する、方法。
請求項20
請求項1において、投与時間が約1分間〜約20分間である、方法。
請求項21
請求項1において、投与時間が約2分間〜約10分間である、方法。
請求項22
請求項1において、投与時間が約3分間〜約5分間である、方法。
請求項23
請求項1において、前記溶液形態のsiRNAが、約−0.25mA〜約−10mAのイオントフォレシス電流により送達される、方法。
請求項24
請求項23において、前記溶液形態のsiRNAが、約−0.5mA〜約−5mAのイオントフォレシス電流により送達される、方法。
請求項25
請求項1において、前記siRNAの投与が、単回投与で行われる、方法。
請求項26
請求項1において、前記siRNAの投与が、多回投与で行われる、方法。
請求項27
請求項1において、前記オリゴヌクレオチドが、イオントフォレシスの前に注射により送達される、方法。
請求項28
請求項27において、注射方法が、眼房内注射、角膜内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、網膜下注射、硝子体内注射、および前房内注射からなる群から選択される、方法。
請求項29
請求項1において、前記オリゴヌクレオチドが、イオントフォレシスの前に局所的に投与される、方法。
請求項30
請求項1において、前記眼へのイオントフォレシスが、オリゴヌクレオチドを投与する工程前に、工程中に、または工程後に実施される、方法。
請求項31
有効量のsiRNAを眼へのイオントフォレシスにより投与することを含む、哺乳動物の眼の疾患を処置するための、方法。
請求項32
対象の眼へのイオントフォレシス送達に適した、siRNA製剤。
請求項33
請求項32において、前記製剤が、siRNAを含むナノ粒子組成物を含む、siRNA製剤。
請求項34
対象の眼にsiRNAを送達するための装置であって、a)眼球の一部を覆うように意図された表面に沿って延在している、siRNA製剤を含む少なくとも1つの媒体を含むリザーバー;およびb)リザーバーと接続された電極を含み、ここで、リザーバーが眼球に接触して配置されるとき、電極が、媒体を通って眼の表面に向けられる電界を供給することができ、それによってsiRNAを眼内に移行させて、その結果、イオントフォレシスにより眼の表面を通してsiRNA製剤を送達する、装置。
請求項35
請求項34において、前記リザーバーが、a)siRNA製剤を含む少なくとも1つの媒体を受容するための第1容器;b)導電素子を含む導電媒体を受容するための第2容器;およびc)第1容器と第2容器との間に位置する半透膜であって、該半透膜は、導電素子に対して透過性であり、活性物質に対して非透過性である半透膜;を含む、装置。
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